メーカーとの面接の日に、家から出してもらえなかったこともあった。
何度も何度もぶつかった。
『親に話す』
と言われたコトもあった。
そんなことで辞めるなら、もうとっくに辞めている。
私は仕事を続けた。
なんで、業界のことをそんな変な目でしか見れないの?
みんなが思っているような、暗い世界じゃないのに。
そう思った。
私には、大切な友達が少しだけいる。
私にとって、その友達は親友だ。
でも、その友達にも、自分の仕事のことを言えなかった。
言ったらきっと、彼女達は私から離れていく。
そう思ってた。
私はパブNGにしていた。
でも、あのレイプ裁判の件の弁護士さんから
連絡が来た。
相手側の弁護士が
『今AVやってるみたいじゃないですか。
本当はレイプも嘘で、こちら側が言ってる通り合意だったんじゃないですか?』
と言っている。
これはどういうことだ。
こんなんでは裁判に勝てないよ。
と言われた。
私は弁護士さんに、
自分の仕事に対する気持ちを話した。
何度も辞めるように言われたが、
辞められなかった。
そして、今度はきょうだいJにバレた。
久々にJに会ったとき、Jは私の仕事のことは何も言わなかった。
いつものJだった。
Jと別れて家に戻ると、
Jからメールが来た。
『言えなかったけど、AV辞めて欲しい。
友達にいろいろ言われて辛い。』
この時、私は初めて
家族に辛い思いをさせているんだってコトに気づいた。
でも、私はこの時すでに、この仕事が天職だと思っていた。
『嫌な思いをさせてしまってごめん。
でも私、今の仕事を続けたい。
胸張って、大きな声で
AVやってるとは言えないけど、
誇り持って仕事してる。
後ろ指さされる仕事かも知れないけど、
辞めたいと思ったこともあったけど、
自分の意志で仕事してる。
嫌々やらされてる訳じゃない。
迷惑かけてごめんね。
でも、辞めるときも自分の意志で辞めるから。
そのときまで、待ってて欲しい。』
そう伝えた。
するとJから
『分かった。
でもこれだけは聞いて欲しい。
加○鷹さんのサイン貰ってきて。』
とメールが来た。
この一言に、なんか力が抜けた。
本当に分かってくれたのかは分からなかったけど、
私の気持ちが伝わったのかなって思った。
それから私は、Jは応援してくれているような気がして、
どんどん仕事を頑張ることができた。
ある時、私の出演作品が雑誌で取り上げられていて、
私の好きな彼にバレた。
彼の店に連れられて、皆で酒を飲んでいたときだ。
『ねぇ、ビデオとか雑誌出てない???』
と、一人のホストに聞かれた。
『あ、俺もそうだと思ってた!!!やっぱ○○ちゃんだよね?』
皆が騒ぐ。
『俺そんなの知らないよ?嘘でしょ?』
と彼が言う。
私はとぼけたのだが、
気になった彼は、他のホストを連れて、その雑誌を買いに行った。
当時私はパブNGにしていたため、
雑誌に載っているのは私じゃないと思った。
でも、戻ってきた彼が持っていた雑誌に、
私はしっかりと載っていた。
みんなの前では打ち明けたくなかったから、
私はその場では認めなかった。
営業時間が終わって、彼にビデオショップに連れて行かれた。
自分の出演作品を突きつけられる。
そこで私は、自分の仕事のコトを打ち明けた。
彼は大きく落ち込んだ。
『そんな気にしないでよ。
うちらもう付き合ってないんだから』
そう言った。
二人で、私の家に向った。
彼は、私が大切だと言った。
だから仕事は辞めてくれ、と言った。
私は辞めないと言った。
彼は私をベッドに押し倒し、私の首を絞めてきた。
それでも私は彼の言うことを聞けなかった。
私はあなたがホストをやりだしたとき、
辞めるように頼んだ。
あなたは辞めなかった。
代わりのホスト早く探して辞めるよと言った。
でもずっと仕事し続けた。
仕事のことで、あなたは私をたくさん傷つけてきたよ?
あなたにとって、ホストの仕事は大切な仕事なんでしょう?
私にとっても、AVの仕事は大切なんだよ。
やっと、自分が心から楽しいって思える仕事に出会えたんだよ。
私とあなたは、
お互いの体だけを求める関係、
それだけでもういいじゃん。
そう言った。
彼はうなだれた。
私と彼は、この後ヨリを戻した。
お互い心も体も縛られない、楽な関係で付き合おう
他に真剣に好きな人ができたときは、きちんと報告をし合おう
そういう約束をさせた。
そうじゃないと、お互いを自分だけのものって勘違いしてしまうから。
他人から見れば、とてもおかしい約束事だろう。
それは恋人とは言えないだろう。
彼は私を自分の物にしようと望んだ。
私も彼を自分の物にしようと望んだ。
お互い仕事を辞めようともせずに。
でも、こうすることで、彼も私も解放されたと思った。
それからしばらくして、今度は私の友達にもバレた。
『もうみんな噂してるよ。
なんでそんな方向に行っちゃったの?』
泣きながら言われた。
『ずっと黙っててごめんね。
でも私、今の仕事好きだから、
誇り持ってやってるから、
辞めるつもりないよ。
それで皆が離れてしまうなら、
仕方ないって思ってる。
もうこんな友達嫌だよね。』
そう言った。
でも、友達皆が応援するって言ってくれた。
友達でいるよって言ってくれた。
嬉しくて仕方なかったよ。
きっとMは親に私の仕事のコトを話している。
だからもう、私には止めるものは何も無いと思った。
私はパブ解禁をした。
インタビューの仕事、グラビアの仕事、写真集、サイン会、イベント・・・
仕事はどんどん増えた。
本当に開放的だった。
楽しかった。
また世界が広がった。