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2007年11月27日 [22:00] AV女優になる前のお話 

社交辞令。

思ってもいなかった再会は、
高校1年の冬に訪れた。


なんとも思わない男と付き合い、
なんとも思わない別れを繰り返し、
高校進学して初めての冬休みを迎えた私は
一人無気力だった。



毎日をただゴロゴロして過ごした。



家にいれば、父親が
私を怒鳴りつける。



ささいなことで口論になる。


ビール瓶や皿やスプレーが飛び交うのも、
当たり前だった。


気の強い親にして、この子あり。
周りはみんな、そんな目で見ていただろう。


私をきつく縛る父親。


たった一人の娘だ。
今考えれば
大切にしたいと思うからこその
束縛だった。


私の誕生を
『お姫様が生まれた』
と喜び、
私の幸せを願って
育ててくれたはずだ。







でも。



ここから逃げたい。





そんなことばかりを考えてた。











元旦。

父親は、大量に刷り上げた手作りの年賀状を
コタツの上に並べ、仕上げていた。

父は、元旦を迎えてから、
年賀状一枚一枚に
丁寧に文字を入れていく。

『年賀状は、年末に書いたり出したりするもんじゃない。』

父はいつもそう言っていた。
そういった『儀式』を、とても大切にする人だ。

『振り分けが大変だから、早めに出してね』
という郵便局の都合なんて、これっぽっちも考えていない。


年末からゴム版画の案を考え、
下書きをし、配置を決め、
少しでも失敗したり、
気に入らないと、
最初からやり直し・・・
これが、3が日まで続くこともざらにあった。


父の版画は見事なものだった。


手刷りの版画だから、一枚一枚色合いも微妙に違う。



ただ見流されるだろう年賀状に、
一枚一枚思いを込めていた。




毎年見るこの光景だけが、
唯一父親を尊敬しなおすきっかけになる。


ろくに会話もないまま、
父親の手元を眺めていた。




『はい、これ。あんた宛に届いた年賀状。』


母親が、届いた年賀状を振り分け
私に差し出した。



私は、届いた年賀状に
一枚一枚目を通した。


その中に、一枚だけ見慣れない字の年賀状。

母親が、振り分け間違えたのだろう。

瞬時にそう思い、宛名を見た。


しかし、間違いなく私宛だ。



誰だろう?






差出人の名前を見て驚いた。






『中園裕貴』







裕貴さんからだった。






『明けましておめでとう。
去年はどんな年でしたか?
高校生活には慣れましたか?
機会があれば、どこか遊びに行きたいですね!』



年末に書いたであろう1枚の年賀状。
私のことを思い出してくれたことが
なんだかとても嬉しかった。



しかし、お出かけのお誘いは、
社交辞令なのだと思った。
おそらく、書くことが他に見つからなかったのだろう。


私は、


『明けましておめでとうございます!
私も、高校入学してから忙しい生活になりました。
お互い頑張りましょうね!』


という、当たり障りのない返事を年賀状にし、
他宛の年賀状と共に、ポストへ投函した。









・・・・続く

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2007/12/05(Wed) 04:22:05 | | さん #[ Edit.]
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